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技術の継承@パプアニューギニア [執筆]

第四回目のエッセイの主題についてお伺いを立てようと、当時の調査団長にメールを出した。
返事はパプアニューギニアから。
現在、水力開発関連の業務に従事しているとのことだ。
パプアニューギニアは高い山々が豊かな未開の地だが、
80年ほど前から近代文明が入り始め、今は電力の必要性に目覚めている。

業務内容について詳しいことは知らないのだが、
従事しているメンツに驚いた。

85歳、78歳、76歳、75歳、あとは65歳が3名で、総括は
「僕が63歳で最年少になってしまう時期もあるんですよ~」という。
恐るべし熟年……壮年パワー。
パプアニューギニアは治安も悪く生活環境はかなり厳しいのだが、
そういうところに戦中世代が赴任して技術支援をしているとは。

日本の水力発電は内部収益率のいい場所は全て開発し尽くしたと言われ、
また自然環境問題もあることから現在ほとんど新規案件はなく、
若手技術者の育成にも苦慮しているとのことである。
だから、いざとなったら、水力開発最盛期に活躍した昭和戦中戦後時代の技術者が
現場に赴くしかないのだろう。
アナログ機械の扱いや、途上国の環境にも若い世代は弱いだろうし、
予算逼迫で人件費が安い場合は、定年後の安い人材を当てた方が確実なのかもしれない。
まさか、日本の水力発電所は大丈夫だとは思うが、
それでも、新規案件をコンスタントにこなしていないと現場人材が育たないという悩みはついて回るだろう。

今日の日本のニュースで、関西電力の原発が全て停止したとあった。
日本のマスコミ、市民は、感情的に原発を鬼っ子に仕立てて騒いでいるが、
こんな状態が続くと若い技術者は気力を失い、原発技術を学ぶ人材もいなくなる。
今すぐ止めたところで、原発はなくならないのに、技術者が消えてしまったら、この先どうするのだろう。
解体するのにも技術が必要だし、科学的な研究だって続けて行かざるをえないはず。
将来全基を停止させるにしても、それならそれで、技術者を大切にして、
今後どのように解体を進め、他のエネルギーに移行していくかを冷静に考えなくてはならない。

エチオピアでは今日も停電が数回起きている。
電気が止まることで受ける産業への打撃は日本でも思い知ったはず。
誰かを悪者扱いして弾劾するのではなく、もっと現実的な技術を照らし合わせながら、
具体的な将来計画を立てて行く必要があるのではないだろうか。

30年後、誰ひとり責任も取れず放置する巨大な原発のモニュメントが残らないように願いたい。
そのとき、80代の技術者たちが立ち上がってくれるだろうか。
立ち上がってもらうためには、やっぱり技術者には感謝しておかなくてはいけない……
と、私は思うのだった。
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かとーA

むかし、西アジアのS国に電気技師のおっちゃんと行った時、彼曰く、
「あそこの水力発電設備は、不相応に大きな発電機を付けてるけど、理由は、そうすると国際機関からたくさんお金が来るからだよ。」と持論を展開していた。
いまだにそんなことってあるんですか?
失礼、立場上そんなことは、語れないよね。

それでは、お気をつけて。
by かとーA (2012-02-20 22:45) 

mika_m

>かとーAさん、こんにちは。
長年従事している開発関係者には偽善的な評価を嫌い、自ら偽悪的に皮肉を込めた発言を面白がる人が少なからずいます。私もストレスが溜まってくると開き直って逆説的な発想でやけくそになることもあります。でも、今も昔も、お金が来るから不相応に大きな発電機をつけるとことはありません。水力開発は小規模では発電単価も上がりコスト・ベネフィットも不利で、大きい方が内部収益率が上がる計算になっているという問題はあったかもしれませんが、おそらく、受けを狙ってそう持論を展開したのではないでしょうか。多くの人間には表の論理よりも、裏側の論理の方を真実と信じる傾向があるので、正当な理論よりも深く記憶に残ったのかも知れませんね。
by mika_m (2012-02-21 19:58) 

イワナ

そういえば先日ニュースでどこかの大学の研究者が出ていて、やはりそのような事をおっしゃってました。
曰わく、廃炉にするにも原発の知識は必要で、研究者を育てて行かなくてはならない、と。
その通りだなぁと思いました。
by イワナ (2012-02-22 21:11) 

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